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「小泉総理と衆議院解散 日本国民の自立へ」


杉田米行

大阪外国語大学


小泉純一郎首相はもう20年以上も郵政民営化を唱えている。しかしながら、2005年8月8日、

参議院は125対108で郵政民営化法案を廃案にした。小泉首相はすぐさま衆議院を解散し

た。「私が改革の本丸と位置づけてきました、郵政民営化法案が参議院で否決されました。言

わば、国会は郵政民営化は必要ないという判断を下した」というのが理由である。小泉首相は

「今回の解散は郵政解散」と位置づけ、「郵政民営化に賛成してくれるのか、反対するのか、

これをはっきりと国民の皆様に問いたいと思います」と明確な二元論的選択肢を国民に提示し

たのである。


小泉首相の政治手法は「トップ・ダウン」が多いのだが、今回のやり方は「独裁的」と言われても

仕方がない。今回のなりふりかまわぬ行動は、小泉路線の終焉を意味しているように思える。

日本国憲法第七条には「天皇は、内閣の助言と承認により、国民のために、左の国事に関す

る行為を行ふ」とあり、その中には「衆議院を解散すること」が含まれている。この条項によって、

内閣には衆議院を解散する裁量権があると解釈することもできる。しかしながら、参議院の法

案拒否によって小泉首相が衆議院を解散することに対する批判もある。


さらに、自民党党員であれ、郵政民営化法案に反対したものを徹底的に弾圧している。反対

者には自民党公認を与えないだけではなく、執行部肝いりの刺客を送り込み、反対者を落選

させようと目論んでいる。権力は腐敗するものである。真のリーダーは自らが持っている権力を誇

示したり、行使したりせずとも、その人がもつ人柄、権威、オーラのようなものによって、人々はそ

の人に従おうとするものである。真のリーダーになるためには、そのようなカリスマ性が要求される。

大統領であれ、首相であれ、独裁者であれ、ひとたび強権を行使するようになれば、短期的に

は自分の思い通りになっても、やがて人心は離れ、長期的にみれば権力の行使が没落の第一

歩になる。


首相就任初期には70-80%という高率の支持率を誇っていた。小泉政権が長期化するうちに

次第に新鮮さがなくなり、小泉首相自身の人気も次第に落ちていった。しかし、小泉首相は国

民の間での自分の人気に酔いしれ、今回の総選挙のように郵政民営化に賛成か反対かという

単純な二元論的選択肢を提示することによって、国民の理解と支持を得ることができると考え

ているようだ。確かに、『毎日新聞』の世論調査によると、衆議院解散直後、小泉内閣の支持

率は7月中旬に行われた世論調査と比較すると14ポイント上昇し、51%と急上昇していた。

フジテレビの世論調査によると、小泉首相の支持率は57.2%になっていた。しかしながら、閣僚

を含め、自民党党員の中にも小泉首相の手法に批判的な意見が多くなっている。9月に行わ

れる総選挙で、自民党と公明党併せて過半数を獲得することができるかもしれないが、小泉氏

の指導力は益々低下するだろうと予想される。


小泉首相は一貫した目標を掲げている。2001年4月に首相に就任して以来、「骨太の方針」を

進めてきた。一言でいえば、小さく効率的な政府にするために構造改革を断行するという目標で

ある。「小さな政府」を目指す小泉首相の目標に小生は100%同意したい。


アジア太平洋戦争終結以来、日本は平等な社会の形成という強迫観念に取り付かれている。

アジア太平洋戦争の間、経済不況、戦争、国民動員などにより、日本人は辛苦をなめてきた。

そして、一面の焼け野原となった戦後も、日本は極度のインフレーション、深刻な食糧不足、

伝染病を含む疾病などに悩まされた。日本政府が積極的に経済活動に介入し、社会政策を

実施することによって戦後経済成長を実現するとともに、国民の間の貧富の格差を最小限にし、

大部分の日本人は、自分が中間層に属していると信じている。大きな政府を築き、公的部門

の活動範囲を広げることによって社会の階層化を阻止してきたのである。小泉首相はその構造

を打ち砕く路線を提示した。構造改革によって民営化を進め、その本丸として郵政民営化を捉

えていた。小泉首相の路線は間違っていない。


小泉改革が達成されれば、ある程度日本社会は階層化するだろうが、活性化されることになろ

う。人間の行為の結果は必然的に不平等である。政府がその状況を人工的に、必要以上に修

正すると、政府の権限は高まり、歳出も増加する。そして、国民は政府に依存するようになり、

社会は活力を失う。現在の日本人は何か困ったことがあると国庫支出を要求し、政府に頼ろうと

する。まさに「一億総甘えの構造」状況といっても過言ではない。


小泉首相はすばらしい目標を掲げた。日本国民が自立し、自己責任をとることができる小さな政

府は必要不可欠である。個人が国家に頼る社会ではなく、個人が実力をつけ、自立した存在と

なった上で、まず、夫婦、家族、親族という最も身近な集団の中で互いに補い合い、その輪を友

人、コミュニティと広げていくことで全体の幸福度を高めていく社会を目指したい。しかし、小泉首

相は権力を濫用してしまったようだ。今回の選挙で自民党と公明党あわせて過半数をとり、その

後、遅くとも2006年秋の自民党総裁任期終了までに、小泉氏に代わるカリスマ性のある「小さな

政府」路線継承者が現れることを望みたい。


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