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第3回
「ブッシュ支持者 国際情勢で数多くの誤認」

中村美千代(米国在住ジャーナリスト)


 国論を真っ二つに分けた米大統領選でブッシュ氏が再選され、ブッシュ政権2期目がスタートした。私たち日本

人にとって、イラクに大量破壊兵器(WMD)はなかったなどイラク戦争の大義名分が崩れてしまったのに、ブッシュ

氏をなぜ米国人は再び支持したか非常にわかりづらかった。ここに一つの解答を提示する調査があるので紹介

しよう。


 米国の公共政策への人々の意識調査を行っているPIPA(Program on International Policy Attitudes :国

際政策意識プログラム)という組織がある。PIPAは社会科学研究者たちの非営利組織COPA(Center on

PolicyAttitudes :政策意識センター)とメリーランド大学のCISSM(Center for International and Security

Studiesat Maryland:国際安全保障研究センター)の共同プログラムである。そのPIPAが大統領選前に実施し

た調査で、ブッシュ支持者の多くは、戦争前のイラクの状況や国際問題に対するブッシュの政策について著しく

誤った認識を持っていたことがわかった。


 イラクで大量破壊兵器(WWD)を捜索していた米調査団は昨年10月6日、「イラク戦争前に生物・化学兵

器の備蓄は一切なく、核兵器開発計画も91年以降、頓挫していた」と結論づける最終報告書を発表した。

その直後の10月12〜18日、全国からランダムに選んだ968人を対象にPIPAが調査したところ、ブッシュ支持

者の実に72%が「イラクはWWDを実際に持っていた」あるいは「WWDを開発するプログラムを持っていた」と

信じていたのである。ちなみにケリー支持者で同様に答えたのは26%にすぎない。


 同時多発テロの原因を調べていた独立調査委員会の報告書についても誤った認識を持っていた。独立調査

委員会が同年7月に発表した報告書は「イラクがアルカイダを支援していたという証拠はない」と結論づけた。と

ころが、PIPAの調査(9月に2回、前述した10月の計3回)を分析すると、ブッシュ支持者の75%が「イラクは

アルカイダに支援を行っていた」と答え、このうち20%は「イラクは9・11に直接関わっていた」とさえ考えていた。

また63%が「イラクのアルカイダ支援の明確な証拠が見つかった」と答えている。また驚くべきは、大統領選に

対する世界の世論についての誤解である。ブッシュ支持者の実に57%が「世界の人々はブッシュの再選を望

んでいる」と答え、「ケリーの当選」と答えたのはわずか9%だった。


 ブッシュ支持者がこのように甚だしい誤解をしている原因について、調査の責任者であるPIPAのディレクター、

スティーブン・カル氏は9・11のトラウマ的な経験による心理的なものがあると説明する。ブッシュ氏がその時に

見せたほぼ完璧なリーダーシップで、ブッシュ支持者の間に大統領の理想的なイメージが出来上がってしまい、

大統領がイラク戦争前に間違った判断を行ったことなどを受け入れることができなくなったと説明する。

またメディアの影響も見逃せない。あるメディアの視聴者はほかのメディアの視聴者に比べて不正確な情報を

得ていることを示すデータがある。例えばFOXテレビを見ている人ほど誤解が多く、公共放送テレビのPBSや

公共放送ラジオのNPRを視聴している人ほど誤解が少ないという実態がある。


 PIPAが03年6〜9月に3回、3334人を対象にした調査を紹介しよう。主にニュースをどこから得るかという

問いに対して「新聞などの活字メディア」と答えたのは19%で、80%がテレビとラジオから情報を得ていた。

ここでテレビ・ラジオと答えた人に、主にどのネットワークから情報を得るかを聞き、「WWDは見つかったか」

「イラクとアルカイダには密接なつながりがあるか」「世界の世論はイラク戦争を容認しているか」という三つの

質問をした。三つの質問すべてに答えた1362人を分析した結果、驚くべきことがわかった。三つの質問のうち

一つ以上誤解していた人々の割合はFOX視聴者が最も多く、実に80%に達した。以下、CBS71%、

ABC61%、NBCとCNN55%と続く。最も低かったのがNPRとPBS視聴者(23%)だった。


 実際、ブッシュ支持者はFOXをよく見ているというデータもある。03年夏の調査(複数回答)によると、「どの

テレビニュースを主に見ているか」という問いに対し、FOXと答えた人のうち52.9%が共和党支持者で、民主

党支持者の16.9%を大きく上回っている。


 世界に影響を及ぼす米国大統領を、世界の情勢について著しく誤認した米国民が選んでいる、この危険性

をわれわれは知るべきであろう。


 この記事の詳しい内容は、朝日新聞のアエラ4月25日号のコメンタリーに記載されている。ご関心のある方は

ご覧になっていただきたい。



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