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第5回
 注目の滋賀県知事選挙から─

 なぜ、相乗り知事が敗れたのか

相乗り現職知事敗北の影響」 

 山田 修 (フリージャーナリスト) 


 近年の知事選挙はおもしろくない。

 投票する前から結果がわかっているからだ。

 自民党、公明党に中央では対立している民主党などが同じ候補を相乗りで推薦しているので、

相乗り候補が勝利するのが確実になっている。

 結果がわかっている選挙に有権者はわざわざ足を運ばない。投票率も50%を割る選挙が相次

いでいる。

 ところが、7月2日に投開票が行われた滋賀県知事選挙で、政党相乗りで3選をめざす現職国

松善次氏が新人の嘉田由紀子氏に敗北した。構図からいえば、自民党、公明党の与党2党に加

え、野党第1党の民主党に対し、社民党1党。誰が見ても、社民党1党推薦候補が当選することは

考えられないのに、逆転現象が起きたのはなぜか。

 有権者の気持ちを完全に見誤ったからだ。滋賀県の民主党は県政の与党の座を手放したくな

いために、党首の「相乗り禁止令」に逆らい、相乗りをして赤っ恥をかいた。

 自民、公明の両与党もそうである。嘉田氏は元県庁職員で環境学者としてそこそこの知名度は

あるにせよ、行政未経験者である。行政一筋で来て、知事を2期務めた行政のプロ国松氏が行

政未経験者で社民党のみが推薦する候補に負けるわけがない、この驕りがあったことは否めない。

 今回の現職敗因の最も大きなものは新幹線新駅建設だ。この新駅は栗東市に建設する地元

請願駅で、滋賀県など地元が建設費の246億円の内240億円を負担する。

 この巨額負担に「もったいない」のキャッチフレーズで嘉田氏は有権者の心をつかんだ。

 滋賀県は先に「空の駅」で同様の失敗をしている。びわこ空港の建設だ。これも巨額の地元負

担がのししかかり、費用対効果が期待できないと県民に判断され、頓挫している。

こ のときは知事選挙には大きな影響をもたらさなかったが、今回は知事選挙の結果を左右した。

 有権者は税金の無駄遣いにうんざりしている。これまで報道されてきた税金の無駄遣いは有権

者の知らないところで処理されてきた。しかし、無駄遣いを阻止できるなら、阻止したい。有権者

の偽らざる気持ちである。「巨額の投資が地元を潤すならともかく、費用対効果が低いものの負

担はごめんだ」これが今回の知事選挙の結果をもたらした。

 有権者はいつまでも施政者の言いなりにはならない。相乗りで政党が勝手に決めた候補者に

NO!を宣言した選挙だった。

 32年前の1974年の知事選挙でも、滋賀県民は同じように施政者の意向に反する選挙結果を

もたらした。当時滋賀県政で磐石の体制をとっていた野崎欣一郎知事は3選をめざしていた。

 対する候補は弱冠40歳の八日市市長の武村正義氏。大人と子供の戦いと見られ、野崎氏の

3選は確実とされた。そのときは、野党が一致して武村氏を推した。野崎氏は自民党、武村氏

は社会党、民社党、公明党に共産党の4政党と労働団体が推した。

 結果は8000票あまりの僅差で武村氏が野崎氏の3選を阻止し、初当選を果たした。

武村氏は後に、衆議院議員に転じ、新党さきがけを創設し、官房長官や大蔵大臣を務めた武

村正義氏である。

 敗れた野崎氏はしばらくして、台湾で客死し、西の田中金脈事件といわれた「上田建設事件」

が発覚し、野崎県政と建設業者の癒着が暴かれた。このときも権力の横暴を県民はうすうす感

じ取っていたのである。

 今回の滋賀県知事選挙の結果も施政者の驕りに対しての反対声明である。得票差も3万票以

上の差がでており、圧勝予想の国松氏にとっては、今回の選挙は惜敗の域を超えた完敗に近い。

 隣の京都府でも政党相乗り知事に単独政党推薦の女性候補が挑む知事選挙が3カ月前の4

月に行われた。

 だが、京都府知事選挙では、女性候補の共産党単独推薦の衣笠洋子氏はダブルスコアに近

い形で、再選をめざした自民、公明、民主、社民4党相乗りの山田啓二氏に敗れた。

 このときの衣笠氏のキャッチフレーズは「女性知事」である。すでに日本で何人も女性知事が

活躍している。いまさら、女性知事でもなかろう。それで有権者の心を動かそうと思ったなら、有

権者を侮っているとしか私には見えなかった。

 今回の滋賀県知事選挙は地方自治選挙の大きな転換点になる可能性がある。政党が勝手に

決めた相乗り候補より、自分たちの意思で候補を選ぶ傾向が強くなるだろう。

 政党相乗り候補対共産党推薦候補といった選挙に有権者はうんざりしている。

 相乗り候補の首長の自治体で、住民を欺く不祥事が続出する事例を見ると、政党にフリーハン

ドを持たせておいたら、ろくなことにはならないのは明らかである。

 民主党も相乗りの候補者を減らしていくだろうし、流れとして相乗りが減少するのも予想できる。

 政党を背景にしない有能な候補者が立候補できるように、有権者が協力する必要がある。これ

までどおり「有権者は投票するだけ」と思っていたら、今回の選挙もあだ花に終わってしまうだろう。



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