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第8回
 

日本は総無責任化」 

  山田 修 (フリージャーナリスト) 


 今年3月に亡くなった植木等さんが出ている新しいCMを見た。植木さんは1960年代「無責任男」

で一世を風靡したが、当時より、現代の方が無責任化が強くなっているような気がする。

 それは最近、責任回避をしている事件が相次いでいるからだ。

 安倍総理の所信表明直後の突然の辞任、大相撲の弟子死亡事件、生命保険会社の未払い、国民

保険の市町村の保険料着服、納入記録紛失問題・・・・。あげればきりがないほど出てくる。

 そして。10月に入り赤福の製造日偽装事件、ボクシング亀田大毅選手の反則事件。伊勢神宮

によく参拝する私にとっても、赤福の事件は大変大きなショックを受けた。亀田選手の反則、大

言壮語の後始末のまずさは大きな責任を問われても仕方がない。もううんざりする。いずれの事

件も当事者が責任をもっと自覚していたら防げた事件ばかりだ。

 ところが、わけ知り顔の識者は言う「昔からこういった問題はあった」「社会はそんなもんだ、

責任を問うても仕方がない」「清い水には魚が棲まない」と。

 ひるがえって、今のままの責任回避社会が続いてよいのだろうか。
 
 
物はあふれ、半世紀以上も戦争に巻きこまれず、経済は成長し、世界でもトップクラスの「金

ち国」になったのに、日本国民の心は満たされていない。不満とあきらめと不安が満ちている。

若者の多くが夢がないと言う。

 心の病に満ちた社会になっているのに、あいかわらず呑気にかまえている人たちが多い。

 たまたま家の近くにあったからという理由で、コンビニに万引きに入り、見つけられ、追っか

けられると、アルバイト店員を刺し殺す。犯人の少年たちは「捕まるのが恐かったから」と犯行

理由をのべる。

 少年といえども、義務教育を終えた者が万引きで捕まるのが恐ろしくて人を刺し殺す。彼らに

親や大人は「責任」をどう教えたのだろう。

 その大人である、国民を引っ張っていく我が国の総理の辞任を、子どもたちにどう説明できる

だろうか。「敵前逃亡」「責任回避」と言われている。確かに安倍総理も苦しかった面はあろう

が、一国の総理が進退の決断をするには、今回は責任回避といっても仕方あるまい。

 相撲協会の場合も、一人の前途ある若者が稽古場で倒れて死んでも、親方をはじめ誰も率先し

て責任を取ろうとしない。世間の風当たりが強くなると、協会幹部はおざなりで減棒をして、責

任を取ったことにする。

 客の無知につけ入り、支払うべき金を払わず、知らんぷりを決め込む社員を容認していた保険

会社幹部は、一流大学を出て出世競走を勝ちあがった、より抜きの人のはずである。彼らは出世

の過程で何を学んだのだろうか。社会保険庁の場合はあれこれ言うまでもない。

 ともかく、地位も名誉も持っている日本国内では一流といわれる人たちも責任を回避する社会

は総無責任化と言える。

 年間3万人と言われる自殺者。自殺をした人間の精神が弱いからだと言う人もいる。確かにそ

の面もあるだろうが、自殺に追い込んだ人も少なからずいる。

 数年前、ヤミ金業者の執拗な追いたてに苦しめられた老夫婦が電車に飛び込み自殺をした事件

が近畿地方であった。

 ヤミ金業者は老夫婦を追いつめたら、どうなるのか、そのときの覚悟をして取立てをしたのか?

 たぶん否である。

 定年を数年残し、退職した元銀行員が言っていた。「銀行では客の立場を考えて仕事をしてい

なかった」客の立場を考える教育を銀行はしているのだろうか。「お客様を最優先する」「お客

様から最も支持される金融機関をめざす」等、建前に掲げるスローガンは素晴らしいが、実際は

どうだろうか。

 金融機関と客のトラブルでは、契約書を盾に法律論をかざしたり、延滞した客の道義的責任を

とがめたりするケースがよくある。借金苦で自殺や犯罪に走る人たちに対してどんな責任を取っ

ているのだろうか。法律的には罪ではないから、責任はないと突っ張っているように私には見え

る。自分の立場を優先し、相手が、客がどうなるのかを考えない、無責任さを感じる。

 責任はきっちり取ることが大切である。損と思えても、責任を取る覚悟で人を指導する、客に

対応することで、悲劇は防げる。

 国民に対して責任を取る覚悟ができていたなら、安倍総理もあのような辞任はしなかっただろ

う。

 北の海理事長が一人一人の力士に対して責任を持っていたなら、あのような経緯にはならなかっ

ただろう。保険会社も社会保険庁もしかりである。

 社会を良くするには一人一人が責任を取る覚悟、行動が必要だ。社員が社長に責任を取るので

はなく、社員は客に責任をとるべきである。官僚は役所に責任を取るのではなく、国民に責任を

取る必要がある。そんなことが今おろそかにされているように見える。

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