THE INSIDE
インサイド
「需要の拡大策 Vol.1」

旧態依然のタクシー業界

 東京交通新聞4月9日付記事に厚生労働省が発表したタクシー運転者(男性)の推定年収が掲載された。タクシー

運転者(男性)の全国平均は、328万円。全産業男性労働者の推定年収は555万4600円で、タクシー運転者

全国平均との格差は、200万円を超える開きがある。

 タクシー運転手の収入は、この様な低い労働収入で数十年推移している。タクシー業界のこうした閉塞状況はいっ

たい、いつまで続くのか。景気に左右され、真っ先にあおりを受けるのは分かるが、何年経っても同じ事の繰り返し

では愚の骨頂といえよう。

 これまでタクシー業界は、需要低迷の打開策を講じてきたのであろうか。営業努力をせず、ただ景気の波に流され、

漂っているだけであったのではないのか。現状を嘆いていても、何も変わらない。運転手の労働環境も、規制緩和後

よりいっそう厳しい状況下にある。供給過剰の現状を見るならば、業界が一丸となって取り組むべき問題は、何より

も需要の拡大である。


庶民の足となっていない

 パイの奪い合いとは、よく言ったものだ。タクシーを利用するお客さんは限られている―。 日々ハンドルを握っ

いて、そう感じることもある。つまり、タクシーに乗る人を大別すると「よく乗る人」、「たまに乗る人」、

「ほとんど乗らない人」となるだろう。その中でも、ビジネス利用と、個人利用に分かれる。個人利用の個人消費こ

そ需要拡大のポイントではないだろうか。

 うちのカミさんは、夫がタクシー運転手であるというのにタクシーとは全く無縁の生活をしている。タクシーに乗

るのは、「もったいない」と言い、乗る人を「お金持ち」とか「ブルジョワ」と称して羨望の眼差しだ。典型的なタ

クシーにほとんど乗らない人と言えよう。実は、これが庶民の実態であり大多数なのである。移動手段にお金を掛け

たくない、安く済ませたい。これが庶民感情である。この様なタクシー利用実態を踏まえ、どうすれば需要の拡大を

図れるのかを考えてみたい。


営業努力

 タクシーを利用しない人達に利用してもらう。これこそ需要の掘り起こしと拡大であり、タク業界が企業努力、営

努力をしなければならない点であると思う。

 大手タクシー会社や大手無線グループは、タクシー利用頻度の高い官庁や企業への顧客獲得には積極的で、正にパ

イの囲い込みにのみ固執している。普段タクシーを利用しない個人のお客様を取り込む営業努力も必要であろう。

国の景気のバロメーターは、何といっても個人消費である。そう考えると、市場は無限大ではないだろうか。

 規制緩和でタク業界も様変わりしている。相次ぐ新規参入で法人タクシーの車両数は増え続けている一方で、大手

タクシー会社はブランド力を生かし、次々と中小タクシー会社をグループ傘下に収めている。また、買収をするなど

て肥大化している一面もある。もはや、会社間の格差は広がっているのが現状だ。この様に勢力を拡大して躍進目

立つ大手に対して大多数の中小タクシー会社は、苦悩しているのではないだろうか。規制緩和がもたらした光と影な

のか、競争力のない会社は、何らかの営業戦略に出て存続を図るなど対策を迫られている。正に存亡の危機といえ

う。


需要拡大のポイント

 需要拡大のポイントは、2点ある。1つ目のポイントは、前述で述べたとおり個人消費である。「タクシーにほと

んど乗らない人」に、いかに利用していただくかが、需要拡大のポイントになるだろう。また、「たまに乗る人」に

「よく乗る人」になっていただくようにするなど需要拡大の余地はあるのではないだろうか。

 タクシーは運賃が高いが、電車やバスにはない優れた利便性がある。マイカーのようにドア・ツードアが可能で、

おまけに運転手付だ。お金を払えば1日貸切も可能である。事業者や協会は、こうしたタクシーの優れた利便性につ

いて、市民に認知してもらうためのアピールや営業努力が足りない。東京の場合、流し営業に依存しているため事業

者を見ていても需要の掘り起しを殆んどしていない現状がある。単に、流し営業と無線営業をさせているだけではな

いだろうか。事業者、協会が一丸となって、様々なタクシー利用の具体的な提案をするなど真剣に取り組むべきであ

る。「タクシーにほとんど乗らない人」に乗って頂くようにする営業努力。タクシーに乗って利便性を知ってもらう

努力が必要である。

 2つ目のポイントは夜間の需要である。特に深夜から朝方にかけての需要が重要となる。タクシーにとって夜間の

間帯は、効率良く営業収入の得られる時間帯で景気のバロメーターともいえる時間帯といっても良い。例えば、東

特別区(23区・武蔵野市・三鷹市)の場合、昼間の時間帯として、朝8時出庫で夜間19時までの時間で11時

間。無理をして1時間だけの休憩を取り、10時間の稼働時間で2万5千円〜3万円の営業収入は可能であろう。夜

間深夜では、0時〜5時まで5時間の稼働時間で昼間の時間帯と同等の営業収入が可能である。これは、会社により

格差があるかもしれないが、その効率を比較すると、時間当たり約2倍の営業収入である。夜間は、タクシーにとっ

て景気を左右する重要な時間帯といっても良いだろう。

 

 仕事を終え歓楽街で飲食するサラリーマンの大半は、終電までに電車で帰宅する。この電車で帰宅するサラリーマ

ンを如何に取り込むかである。終電の後、1万円を越えるタクシー利用は、会社から出るタクシー・チケット(売り

掛け・契約チケット)を利用して帰宅するお客さんが多い。特に東京郊外から通うサラリーマンにとって、自宅まで

1万円を越えるタクシー代金の自腹は厳しいからだ。自腹で帰宅するお客さんの、取り込みの決め手はやはり運賃で

ある。

つづく

↑Return to Top
↑Return to The Inside Home

CopyRight(C)2003-Future Club-Taxi Official