第14話
 「誰かが声を上げなければ変わらない」

 

 他人の事などとやかく言いたくはない。他人の事を言う以上は、自分はどうなのかと自問自答

することもある。あなたはどうなのか?と、問われ「自分は立派です」などと言えるわけもない。

だから、自分の発言と行動には責任を持ちたい。そして、この業界に身を置いて生計を立ててい

る以上は、プロとしてのプライドがある。だから、声を上げ批判するのである。


 

 自分の仕事に誇りを持てない運転手が、あまりにも多い。これは、免許証さえあれば誰でも一

人前のタクシー運転手として簡単にデビューできるからだ。

 他の職業でリストラになった者が入ってくる。ついこないだまで社長として辣腕を振るってい

た者もいる。この業界には、訳ありで様々な職業に就いていた人たちが集まってくる。正に社会

の縮図である。こうしてこの業界に入ってきた人たちは、悩みを抱えているなど卑屈になってい

る人たちも多い。タクシーという仕事に馴染めない人もいる。タクシーの仕事に誇りを持てず、

やがては仕事が雑になり辞めざるを得なくなる人もいる。非常に人の出入りが激しい業界である。

こういった現実を変えていくには、事業者の意識改革しかないであろう。

 プロとしての自覚が無い輩ばかりがはびこっていると業界の信用は失墜し、社会に認められな

い職業となるであろう。労働賃金の低さも、要因はこの辺が根源にあるともいえるのではないだ

ろうか。お客さんは、一流には納得してお金を払う。三流には、不快になり一銭も出したくない

ものだ。つい先日のタクシー運賃値上げ報道も、運賃値上げが容易ではないことを物語っている。



 「自分さえよければそれでよい・・・」そんな世の中の風潮がある。これは、正にタクシー運

転手にもあてはまる言葉でもある。あまりにも質の悪さが目に付くからだ。そこに身を置く者に

とっては、耐え難いことである。「東京のタクシーも善くなった」と言う声もあるが、これはた

だの表層的な評価にすぎない。昼間は真面目に一生懸命営業している運転手でも、深夜の繁忙時

間帯になると平気で乗車拒否を繰り返す者もいる。タクシーは、忙しくなるほど乗車拒否が横行

する性質がある。これは、少しでも良い客を乗せたいという運転手の貪欲な心理が働くからだ。

暇になると、一転して客の争奪戦となる。なんと、身勝手で愚かな運転手たちであろうか。



 悪は滅び正義は勝つ―これは、史実でも証明されている揺るぎの無い事実である。この法治国

家で違法行為がまかり通るわけがない。悪行はやがて滅びゆくことを知るべきである。悪を見て

見ぬふりをするのは、同じ罪と言ってもよいかも知れない。悪を放置しておいて善くなるはずが

ない。誰かが声を上げなければ変わらないのである。

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