| 第4話 「銀座の個人タクシー」
昼の銀座と様変わりする。高級歓楽街銀座は、夜の社交場となるのである。高級外車が行き交 い、黒塗りハイヤー、タクシーが二重、三重になって駐車している。タクシーは上客を求め銀座 に殺到する。タクシーの乗車が法令で規制されるほど猫も杓子も銀座なのである。 ある個人タクシー事業者は言った。「なんだかんだ言っても、やっぱり銀座だよな」 いい仕事を した後の弁である。しかし、もうその神話は崩れ去っていると言ってもいいが、それでも上客を求 めタクシーは銀座に殺到する。 都心に向かう途中、街灯が少ない暗がりの港区白金辺りの幹線道路脇で中年男性を拾った。 「浅草までお願いします。」 「景気のほうはどうですか?」 世間話をしばらくしたところで、銀座の個人タクシーの話になった。以前、銀座でひどい目にあっ たとの事だった。事情をよく聞いてみると、乗車を申し込み乗り込んだのはいいが、走って間も無 く降ろされたということだ。悪質な下車強要である。以来、銀座では個人タクシーに絶対乗らない と言う。普段タクシーを利用の際は、契約しているチケットを使用していて個人タクシーか四社タク シーに乗るという。 「とにかくけしからん!銀座の個人タクシーは。おたくの組合の個人タクシーもだよ。」 「銀座では四社に乗る。」 興奮冷めやまぬお客様に諸事情を話し、今個人タクシーは、どんどん新しい人に代わりよくなっ ていることを説明してお客さんを降ろした。
午前1時を回った雨の銀座。客足は、まばらだ。よく見かける顔の、いつもの白タクの客引きが 客を物色している。 お客さんが流れてきそうな場所で付け待ちをしてみた。十数メートル前方に他組合の高級車 の個人タクシーが停まっている。その脇に運転手らしき風体の男が傘をさして立っている。ワイ シャツ一枚の姿だがノーネクタイで胸元は、第二ボタンまで開けている。おまけに足元は、黒の ゴム長靴を履いている。どうみても柄の悪い男だ。歳のころは60歳を超えているだろう。 後方から来るお客さんを物色しているようだ。ホステス連れの客に近づいて盛んに声を掛けて いる。二言、三言声を掛けている。交渉が成立したようだ。タクシーの後部ドアを開けその客は 乗り込んだ。違法な客引き行為と、行き先を聞いて運賃の値引き交渉をしていたのだろう。おそ らくその客も、こういった個人タクシーを目当てに捜していた常連さんであろう。 こういった個人タクシーは、行き先を聞いて、近い客は絶対に乗せないのである。運転席に 座って営業するのがタクシーだが、車外に出てのこのような行為は、あからさまな乗車拒否行為 を偽装するためでもある。違法行為の形態は様々だが、こういった銀座を舞台にして違法行為 を繰り返し、営業している個人タクシーの輩はたくさんいる。いずれも、過去に認可を受けたベ テランの年配者で高齢者も多い。所属の組合でも排除したい連中であろうが、どうして除名にし ないのであろう。見て見ぬふりをしているのであろうか。同じ看板を背負っている以上、真面目に 営業している事業者の足を引っ張る行為と、お客様への信用の失墜行為は許せるものではない。 自分さえ儲かればそれで良い。法や規則を平気で破る輩は、排除すべきだ。法人タクシーの 模範となるべき個人タクシーだが、それとは異なる個人タクシーが銀座にいる。
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