| 第6話 「豪華絢爛 東京の個人タクシー」
夜の東京。午後7時を回った頃、何処からともなく続々と都心の繁華街に個人タクシーが集まってくる。 昼間は法人タクシーしか見かけないが、夜間の様相は一変する。個人タクシーの多さが目を引いてしま う。都心の繁華街に集中する個人タクシーの多さ。これには、法人タクシーの運転手もうんざりといった 心境であろう。
地方から上京したお客さんは、感嘆する。 「凄いですね!運転手さんの車も良いけど、東京の個人タクシーは高級車ばかりですね。」 車に興味のある客さんはよく言う。その度に私は、「タクシー会社に勤務していた頃は、安普請(ヤスブ シン)の車に10年も乗らされてきましたからね・・・」と言葉を返す。 個人タクシーになったら好きな車に乗りたい。乗り心地が悪い安普請のタクシーでの運転はもうご免だ というのが、ドライバーの心境ではないであろうか。 1日、こま鼠のように都内を200kmから400km走るのである。タクシー会社の車両は、個人タクシー の高級車と比較すると、車体の剛性からサスペンションに至るまで雲泥の差があり、体の疲れ方も違う。
走っている個人タクシーをよく観察すると、ロー・コスト代表で定番だったLPG車両のセドリック、クラウ ン。ガソリン車両のクラウン、フーガ、セルシオ、シーマなど高級車が走っている。その高級車両の数は、 今や既にLPG車両の数を上回っている。地方都市の質素な個人タクシー車両と比較すると、正に豪華 絢爛である。その高級車両を操るのは、おじいちゃんをはじめとした年配の個人タクシー事業者達だ。 高級車は乗り心地も良く、運転していても疲れないので人気だ。また、営業面でもお客さんが選んでくれ るし好評とのことだ。 最近、トヨタの高級車セルシオが随分増えた。どうやら中古車が大半らしい。新車価格が、600万円以 上するが、中古車だと300万円位から購入できるようだ。中には、新車価格で1千万円はする最高級車 センチュリーの中古車も数台見かける。センチュリーといえば、黒塗りが定番であろう。それが、白地に ブルーラインなのである。見た目が気持ち悪くて仕方がない。まったくセンチュリーに似合わない、相応 しくない色なのである。何よりも、お客さんに狭い路地を指示された場合はどうするのだろう。あのでかい 図体じゃ進入できないであろう。一般営業無しでロングの予約営業のみというのか。いくら好きな車両を 選択できるとはいえ、営業面においてタクシーとしての基本的なことに支障をきたすのではお客様のニー ズに応えられないではないか。タクシーを舐めている横柄な事業者だ。
東京の個人タクシー高級車志向はエスカレートしているようだ。10年間安普請のタクシー車両で会社 のために奉公した自身へのご褒美と捉えるべきか、好きな車を選ぶがよい。しかし、このところのガソリ ン価格の高騰で経費節減を余儀なくされている。採算をとるのも容易ではない。高級車の返済のため 休日も返上で働く事業者もいる。即ち、見栄を張り無理な高級車の導入は事業者にとって、リスクを伴う ことになる。 何よりも東京市場は、流し営業が主体である。お客さんは、走ってきたタクシーに手を挙げ乗車する。 わざわざ車種を選択するお客さんは極一部である。営業面で腕の悪い事業者は、高級車両でカバー するのも手かも知れない。 近年の個人タクシー事業者の死亡原因第1位は肺がんで、第2位は自殺である。原因の詳細につい て統計は採られていないが、個人事業者として自己管理が大切なのは言うまでもない。 |
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